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『機動戦士ガンダム』 [Comic / Animation]

いわずと知れた、第2次アニメブームを支え、今なお新作が作り続けられ、新たなファンも獲得しているロボットアニメの金字塔である。

あ、いや、そう書いてみて、世の中的にはそうかもしれないけれど、自分にとってのロボットアニメの金字塔は、やっぱり小さい頃タイムリーに見ていた『マジンガーZ』『グレートマジンガー』『UFOロボ グレンダイザー』『ゲッターロボ』『鋼鉄ジーグ』『大空魔竜ガイキング』『勇者ライディーン』『超電磁ロボ コンバトラーV』などなど…なのかなあ、と(なかでもイチオシは『マジンガーZ』なわけだが)。で、その時代あたりでロボットアニメってだんだん見なくなっていたのだ。

なもので、小学校6年の時に出会った「ガンダム」は既にロボットアニメを卒業した自分にとっては見る対象ではなく、歯牙にもかけない状態であった。

しかしながら中学に入り、「ガンダム」の劇場版が作られることを知った。テレビシリーズの劇場版といえば相当な人気がなければなし得ないことである。「ガンダム」がそれ程のものなのか? そのことが不思議で仕方がなかった。

そんなある時、劇場版第1作目のポスターを目にして驚いた。ベージュ色の背景にガンダムの頭部を背中に主人公のアムロ・レイがヘルメットを持って立っているアレだ。これまでのアニメのポスターでは見たことのないグアッシュを使用した絵画的なポスターが目を引きつけて離さなかった。これを見て、これまでのロボットアニメとは違うのでは? と感じた。そしてまもなく開始された再放送を見て、それは確信となった。

そんなわけで自分にとっての「ガンダム」というのはキャラクターデザイナーでありアニメーションディレクターでもあった安彦良和なしには今に至っても成立しないものとなっているのである。そのためストーリーとしてはエピソードにもふくらみのあるテレビシリーズの方がいいとも言えるのだが、やはり最高傑作は劇場版であって、なかでも3作目の『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙篇』なのである。ここでの新作画のすばらしさは他に例えようもなく、鉛筆のタッチを残した柔らかな線が生み出す血の通ったキャラクターたちの演技は声優陣の素晴らしさもあいまって、何度見ても飽きさせないものとなったと感じている。

だからかもしれないが、ガンプラにも興味はなかった。モビルスーツはどうでもよかったのだ。キャラクターこそ「ガンダム」世界を象徴するものと考えていたのだ。

そのためその後作られた続編や「ガンダム」を名乗る新作たちには目もくれることはなかった。さすがに『Zガンダム』だけはとりあえず見たのだけれど、安彦良和はキャラクターデザインのみで、作画は当時『ザブングル』『ダンバイン』『エルガイム』を生み出してきた湖川友謙率いるビーボォーが中心だったこともあって、線や動きが堅く(湖川友謙がキャラクターデザインをした作品では問題ないのだけど)安彦良和の絵にはあわなかったように思うのだ。『逆襲のシャア』や『F91』も同様で、安彦良和のキャラクターを生かし切っていない作画に失望した記憶がある。

今、手塚治虫の漫画を後輩の若手漫画家が再構築しはじめている。代表的なものは浦沢直樹の『プルートゥ』だろう。キャラクターを借りて独自の解釈で作られたその作品はとても興味を引くものとなっている。だが、ファースト以降の一連の「ガンダム」作品群は、別なキャラクターで時に別な演出家で作られたりしてきたが、果たしてファーストを再構築するに至ったものはあっただろうか。なぜ「ガンダム」の衣を着なければならないのか、その部分がとっても不思議なのだ。

また(これはたぶんに好みの問題をはらんでいるので、そうではないと思われる方も多いであろうが)キャラクターに個性がない。多くの登場人物たちに人間味のある性格付けもなされてはいない。ファーストではゲストキャラクターまで印象に残る人物造形がなされていたように思う。連邦もジオンも、末端の兵士まで個性的な人物デザインと描き分けがなされていた。これは中年のオヤジをとっても魅力的に描くことができる安彦良和ならではのものなのだろう。

こうした部分は実は「ガンダム」に限らず、昨今のアニメーション全般にわたって同じように存在する問題なのかとも思うのだ。キャラクターデザイナーが全て同じ人間ではないかと思うような無個性な絵と、いわゆる大人の登場人物が(あまり)存在せず、10代からせいぜい20代くらいの試聴するファン層と同じくらいで、殻にこもった自分たちだけの世界を展開している作品が多くはないだろうか。代表的なのはいわゆる「萌え」アニメなのだろうが、こうした兆候がいつから出てきたものか知らない。ただもはやそこには自分が見たいと思うべきものはないのだなあという感慨しかない。今はアニメといえば主にCSで放送される昔の作品とジブリやディズニーくらいしか見なくなってしまった。

自分が変わってしまったということなのか、あるいは変わらないからついていけていないだけなのか。

話を「ガンダム」に戻そう。最近、安彦良和が描くファーストガンダムの漫画化作品『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』が人気だという。読者の大半は自分と同世代で、もしかすると上記のようなことを思っていた人たちなのかも知れない。けれど、新作の『SEED』などを見て「ガンダム」ファンになった小学生などもいるだろう(私の甥もそうだ)。そうした若いファンにこそ『THE ORIGIN』を見て欲しいな。そして知って欲しい。この絵によって作られた世界こそが「ガンダム」の原点であったのだ、と。

※ちょっと大げさだったかな。

 

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コメント 5

arukakat

なんとかガンダム世代です。
私の頃はすでにニューガンダムってやつでしたが・・。
1stガンダム、映像でもマンガでも読みました。なんというか、ただのロボット(じゃないけど)マンガではないんですよね、ガンダムってのは。
私はジオンのユニークなモビルスーツ(モビルアーマー含む)のプラモデルばっかり作ってました。
by arukakat (2005-01-26 00:44) 

MK

「ガンダム」ってロボットが出てくる必然性があんまり感じられないところが従来のロボットアニメとは違っていたのかもしれないですね。あと、敵味方が不鮮明なのも新鮮でした。末端の兵士はどちらかといえばジオンの方が「いいひと」が多くて、連邦の方が胡散臭いタイプの軍人ばっかりってところも新鮮でした。
by MK (2005-01-28 01:50) 

正輝

ガンダム大好き人間です
by 正輝 (2005-03-03 12:23) 

eneco

はじめまして、papaさんのブログから飛んできました。
私もガンダム=安彦良和なので、ファースト以外は正直見る気がしません。
本当に最近のアニメのキャラクターは個性が無いですよね。
安彦キャラ=生身の人間という感じがします。
by eneco (2005-05-12 16:40) 

MK

安彦良和のような柔らかい線のアニメが減ってきたのは、デジタル彩色が始まったのも要因かも知れないですね。鉛筆のタッチがはっきりしていて線が閉じられていないような場合色を流し込めないみたいですから。そのせいかキャラクターの目の周りの表現(まつげなどの描き方)が画一化されてきてしまっているんじゃないでしょうか。それでもジブリ作品のように個性を持たせることは不可能ではないのに、流行りなのかほとんどの漫画原作ではないオリジナルアニメが萌え系のテイストを持っているのには不愉快で残念な気持ちがします。声もそうですけどね。
by MK (2005-05-15 00:42) 

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