『スーパーマン リターンズ:IMAX 3D Experience』 [Cinema]
※映画の感想・評論(もどき)の文章では基本的にストーリーに触れる部分があるため未見の方はご注意を。
2006年アメリカ
監督:ブライアン・シンガー
撮影:ニュートン・トーマス・シーゲル
音楽:ジョン・オットマン
出演:ブランドン・ラウス /ケヴィン・スペイシー /ケイト・ボスワース /ジェームズ・マースデン /フランク・ランジェラ /サム・ハンティントン
評価:★★★★★
78年の劇場版『スーパーマン』は思い出深い作品だ。夏休みで父の会社に遊びに行った帰りにせっかく都内に出てきたのだからどこか行こうかということになって一緒に見たのがその第1作だった。当時小学4年生。今や日本で最も座席数の多い映画館となった新宿ミラノ座の巨大なスクリーンに映し出されたワクワクするストーリーと迫力ある飛行シーン…。オープニングから画面に釘付けだった。
その後『スーパーマンII/冒険篇』『スーパーマンIII/電子の要塞』まで楽しんで見たものだ。中学になってからも池袋の文芸坐で、正月興行に1作目2作目の2本立て、翌年に2作目3作目の2本立てを上映したりしていたので、まだビデオが浸透していなかった時代だから、とにかく見たくて通ったものだった。
でも『スーパーマン4/最強の敵』はそれから大分時間が経ってしまったことと、これまでのシリーズから印象が変わってしまって、予告などを見る限り、いくらレックス・ルーサーが再登場しても、あまり興味をそそられず見に行くことはなかった。
そしてクリーストファー・リーブも逝ってしまい、スーパーマンの新作が作られると噂されても、ティム・バートンが監督でニコラス・ケイジがスーパーマン役だなどと言われてはワーナーも何を考えているのかと、そんなモノを作っても見に行くものかと思ったりしていたのだった。
様々な紆余曲折を経て、ようやく満を持して制作された『スーパーマン リターンズ』。予告を見て驚いた。スーパーマン役のブランドン・ラウスは時折クリストファー・リーブに似ているなあと思える瞬間もあり、ケヴィン・スペイシーのレックス・スーサーだって、ジーン・ハックマンばりの風貌で、セットも含め、そこに映し出された世界はまさにスーパーマンだったのだから。
それで、最初はこの作品は1作目のリメイクだと思っていたら、2作目の後の話しだという。ならば見る前に1作目2作目をもう一度見直しておこうと考えたのが運の尽き。その時間がなかなか取れず、結局はロードショー公開が終わってしまったのだった。これでもう大きなスクリーンでは見れないのかあと思っていたら、IMAX版がまだ公開中だと知り、本当は3D映像で作品にのめり込むのを邪魔されたくなかったから、最初にIMAXというのは気が引けたのだけど、もう選択肢はないので仕方なくメルシャン品川IMAXシアターへと出掛けた。
見れば見る程、ブライアン・シンガー監督が、リチャード・ドナー版『スーパーマン』を愛していて、作品に敬意を払っているのがよくわかった。だからこそ、そのかつての作品を大好きなファンも、すんなりこの作品を受け入れられるのだろうと思う。そう思う程、これはスーパーマン以外の何者でもなかった。
特に感心したのはオープニングのスタッフクレジットだ。空を飛ぶ立体処理されたクレジットは、1作目当時も目に新しく、そしてスーパーマンの飛翔感をしっかりと感じさせるものだった。それが再現されているのだ。それから2作目では声さえ出てこなかったジョー=エル演じたマーロン・ブランドが、当時の映像やCGで流れてきたことにも驚いた。
とにかく挙げればきりがない程細かいところまで旧作のディテールをしっかり継承していて、本当に感心してしまった。そして単に旧作をなぞっただけではなく、しっかりと新しいスーパーマンにもなっていて、出演者もそれぞれの役に馴染んでいた。けれど、コメディタッチの場面は前作よりは少し苦手そうな感じがしたかな。
ストーリーもこれからのスーパーマンとロイスのゆくえだったり、ジェイムズはどうなってしまうのか、とか、ロイスの息子のジェイソンは本当に…なのか?…とか。気になることもいっぱいなのでぜひぜひ続編を作って欲しいと願うばかりだ。
惜しむらくは、ラストの成層圏まで登ってきたスーパーマンにはカメラ目線で手を振って欲しかったなあ。
いずれにしても、最近は数多くのアメリカンコミックを原作にした作品が映画化されているが、ワクワクするストーリー、魅力的な登場人物、迫力ある映像効果、そして後味が清々しいさわやかなヒーローものはこれしかないといえるくらい、そんな気持ちのいい映画であった。
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