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『007/慰めの報酬』 [Cinema]

※映画の感想・評論(もどき)の文章では基本的にストーリーに触れる部分があるため未見の方はご注意を。

2008年イギリス/アメリカ
監督:マーク・フォースター
製作:バーバラ・ブロッコリ/マイケル・G・ウィルソン
音楽:デヴィッド・アーノルド
出演:ダニエル・クレイグ/オルガ・キュリレンコ/マチュー・アマルリック/ジュディ・デンチ/ジャンカルロ・ジャンニーニ
評価:★★★☆☆

『カジノ・ロワイヤル』に続いて公開中の新作『慰めの報酬』を観る。実は劇場で007を観るのは『トゥモロー・ネバー・ダイ』以来である。この前の『カジノ・ロワイヤル』の記事に書いたように、ピアース・ブロスナンの後期の荒唐無稽な感じと派手なアクションが行き過ぎな印象がどうしてもあったからだ。

さて、今作は『カジノ・ロワイヤル』の1時間後からストーリーが続くという007シリーズでは初の前後編といった感じの作品になっている。シリーズおなじみの“ガンバレル”とジェームズ・ボンドのテーマ曲も無しにいきなりカーアクションからスタート。

そのカーアクションの手に汗握る感じはこれまでのシリーズ作品にはなかったもので、とにかく派手。その勢いで観客を画面に釘付けにする効果はバッチリという感じだ。そしておなじみ「M」を演じるジュディ・デンチの登場。正直、ここにきてはじめて自分が007を観ているのだと認識する。そう、今作で唯一007を感じさせるのは何を隠そうジュディ・デンチだけなのだ。

これは007なのか?

これがとにかく今作の肝のような気がする。アクションのあるスパイ映画だというのは確かなんだけど、それだけだと『ボーン・アイデンティティー』をはじめとする「ジェイソン・ボーン」のシリーズと変わりがない。あえて007シリーズでこういう形の映画である意味はどこにあるのだろうか…という問いかけが頭から離れないのだ。

確かに荒唐無稽さが行き過ぎてしまうと、あまりの非現実的な感じがジェームズ・ボンドを不死身のスーパーマンにしてしまって、どんなアクションもピシッと着込んだスーツで軽やかにあくまで英国紳士然としてスマートにこなしてしまうある種のファンタジーになり、それはそれでおきまりのものとしての楽しみはあるけれど、ハラハラもしないし飽きもくる。その反動としてのリアルアクションなのかもしれないけれど、前作にも増してユーモアのないジェームズ・ボンドは、「Bond. James Bond」といういつもの名乗りもなく、格好いいのだけれどしっくりこない…そんなモヤモヤを感じさせずにはいないのだ。

前作のラストでその「Bond. James Bond」というセリフが出てきたので、ここからが本当のジェームズボンドの物語のスタートなんだなと今作に期待したのだけど、結局は今作もその続きで、まだ前作で死んだヴェスパーの復讐を心に秘め、その感情を抑えきれずに任務に当たっていたことを考えると、そこにユーモアも求められないし、スマートにサラッとアクションをこなすというのも無理からぬ表現なのかもしれない。

ただ今作のラストでは、ようやくこの件にけりを付けたような表現があり、本来の英国諜報部員たるジェームズ・ボンドが誕生したともいえ、ここから本格的にこれまでの007になっていくのではないだろうか。そういう意味では次作でどこまである種定番の007らしさが盛り込まれてくるかが楽しみではある(なんだか前作と同じような感想だけれど…)。

アクション映画としてのおもしろさは一級。だけど007シリーズとしてみた時に、そこに期待されるものとのベクトルの違いを感じたので評価は星3つとした。ちょっと厳しいかな。
 
007/慰めの報酬~オリジナル・サウンドトラック

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  • アーティスト: サントラ
  • 出版社/メーカー: BMG JAPAN Inc.(BMG)(M)
  • 発売日: 2008/11/26
  • メディア: CD

 
007 カジノ・ロワイヤル スペシャル・エディション (2枚組) [Blu-ray]

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