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『時をかける少女』 [Cinema]

※映画の感想・評論(もどき)の文章では基本的にストーリーに触れる部分があるため未見の方はご注意を。

2010年「時をかける少女」製作委員会
監督:谷口正晃
原作:筒井康隆
脚本:菅野友恵
主題歌・挿入歌:『ノスタルジア』『時をかける少女』いきものがかり
出演:仲里依紗/中尾明慶/安田成美/勝村政信/石丸幹二/青木崇高
評価:★★★★★

『時をかける少女』はいったい何回映像化されているのだろう。自分の世代ではさすがに最初期のNHKドラマシリーズの『タイムトラベラー』は未見であるし、よく知らない。記憶に残っているのはやっぱりなんといっても83年に公開された大林宣彦監督作品で原田知世主演の角川映画『時をかける少女』だ。

その作品のイメージが強く、その後の映像化はなんとなくどれも積極的に観ようとも思わなかったし、チラッと見ても気になることもなかったし、記憶にも残らなかった。

そんな中、2006年のアニメ版『時をかける少女』はその作品の出来映えからかなりの話題となっていたし、評価も高かったので、唯一ちゃんと観た作品だ。確かに傑作だった。アニメらしい弾け方をしていたと思うし、その中にちゃんと『時をかける少女』らしい繊細で淡い初恋のイメージを盛り込んでいた。

そしてそのアニメ版の主役の声を担当していた仲里依紗をヒロインとして迎え、実写映画化されたのが今回の『時をかける少女』だ。実はこれもやっぱりあんまり当初は期待していなかったのだ。けれど予告編をみたらもうダメ。これは観るべき映画なんじゃないだろうかという気持ちがわき上がってきて、もう押さえることができず、つい公開初日の今日、映画館に足が向かってしまったのだった。

ものが違うし単純に比較しちゃいけないんだろうけど、今回の実写版はアニメ版を凌駕する作品だと思った。とにかく原田知世主演83年版『時をかける少女』への愛が貫かれていて、オマージュがいっぱい。タイムリープのCG映像もどことなく大林宣彦風。いくつかのカットは構図も含めて83年版を意識したものもあって、それだけで胸一杯になる。細かいところでは時代考証が間違っているところもあるようだけれど、そのあたりの数年の違いによる細部を知らなかったからそこはあんまり気にならなかった。むしろ主演の仲里依紗の魅力がその辺を帳消しにするくらい画面に釘付けとなったのだった。役柄としてちゃんと現代版の主人公になっている。表情もコロコロ変わって引き込まれる。今映画を思い出しても切なくなる。もはや自分の中では今年の邦画ベストワンだといってもいい。

8mm自主映画が過去に行ってからの軸となっていて、8mm映画を製作した経験がある身にはまるで自分事のように感じられてしまって、時代背景は自分よりも少し上の世代だけど、それでも自分の中学・高校時代に近いし、しかも83年版もその頃見ているから余計に思い入れが強く感じてしまっているのかもしれない。

そして主題歌もいい。切ない青春模様を歌わせたら他にないだろうというくらいマッチしている「いきものがかり」が担当。オープニングで流れる「時をかける少女」のリメイクは元気が良くて画面を走り抜ける仲里依紗の絵にピッタリ。そして主題歌「ノスタルジア」は泣けるバラード。で、映画本編とは別なんだけど、この「ノスタルジア」のプロモーションビデオがまたいいのだ。映画のモチーフを巧みに利用したもので、これがまた胸に刺さりまくり。懐かしさを感じる8mm自主映画の味わい深い映像がよく、特に最後の捨てカットをつなげたところは『ニュー・シネマ・パラダイス』にも通じる名場面だと思う。

とにかく泣いた。いい作品だった。よかった。今日は本当はもう一本何か見ようかと思ったけど止めてしまった。この余韻にひたっていたかったから。


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