「のだめカンタービレ」:Lesson11最終回 [TV / Entertainment]
ついに「のだめ」が終わった。
中盤以降、原作ファンも原作未読の人も含めて、大いに盛り上がってきたように思う。それはなんといっても役者が役に馴染んできたこともあったからだろうし、演奏シーンも当初より視覚的により本物っぽい雰囲気をしっかり出して、物語にリアル感を出すことに成功してきたからということもあるのだろう。
さて、終わってみると原作の9巻までの日本編をよく11話のドラマに凝縮できたものと思う。原作でもかなり印象的なエピソードを大胆にカットしたりもしているのだが、ほどよく原作のセリフや表現をそのままちりばめることで、思わず原作既読者もニヤついてしまう場面もあったり、また、物語の主筋の部分やキャラクターの性格付けなどは極力原作に沿ったものとしたことで、原作が持ち得ている魅力をドラマの中にまとめ上げることができたのだろうと思う。
で、最終回である。
実家に帰ったのだめを迎えに行く千秋。そして最高の盛り上がりを見せる大川のハグシーンから干潟での千秋とのだめの父親との会話など、充実した構成で画面に引きつけられる。
コンクールの落ち込みからの気持ちの切換は、千秋がもたらしたものではなく、のだめ自身が自分で取り戻したものであって、やっぱりピアノを弾くのが好きなんだと気付いていく流れが実にスムーズにスッとこちらに伝わってきて心地いい。
ところがこの実家の場面からラストまでが少々いただけない。もちろんクリスマスコンサートの場面は、演奏する姿がより本物っぽく、しかもドラマのラストということで、出演者みんなが自然と感極まった表情で演技をしていて、見ているこちらにも感動を誘う名シーンとなっている。そのことは間違いないのだが、話によると放送当日もまだ編集作業をしていたというし、なにより時間延長をしても少し伝えたい内容を全部出すには時間が足りなかったのか、無理な繋ぎが多かったようにも思うのだ。
まずのだめと千秋が九州から東京へ戻ってくるのが唐突すぎる。あのカットの繋ぎ方では時間軸が不明瞭だ。例えば原作のようにこたつに寝ころんだ千秋とのだめが、「東京に帰ったら…」というようなセリフを言うカットを挟み込むとか、あるいは記念写真を撮ろうというオケメンバーのカットの前に、コンサートホールの表など、時間経過を示すための風景カットを入れ込まないと、自然な流れにならないような気がするのだ。
あとは、コンサートの終了でドラマを閉じるのは、最高の盛り上がりで終わらせたいという意図なのだろうけれど、11話続いた物語の締めとしては中途半端ではないだろうか。やはり直前までのだめのピアノの留学先の試験は大丈夫なのかという話をしていたのだから、その結果をはっきりさせて終わって欲しいと思った。なので、できれば卒業式のシーンまで描いて、ラストは千秋にのだめが腕を絡ませて、ふたりで学校を去る、というような、まさに原作の日本編の最後の場面のような形で締めくくって欲しかった。
ただこのドラマでは、千秋はミルヒーに、クリスマスコンサートが終わったらヨーロッパに行くと言っていたので、卒業を待たずして日本からいなくなることになるわけだから、卒業のシーズンまで描こうとすると原作のようにはいかないかも。そもそも、のだめの試験の手助けができないではないか。まあその辺はハリセンが特訓してもいいのだろうけど。それで、卒業の時に千秋が一時帰国とか。
あんまりそのあたりの途中経過は原作でも描いていないので省略しても構わないだろうけれど、要するに千秋とのだめが音大の仲間たちと別れて、新たな音楽の勉強の地に旅立つというところで締めて欲しかったのである。それこそがドラマの幕切れとしてもケジメがついたんじゃないかなって思うんだけど。そこがとにかく残念だった。
DVD化される時に、最終回の粗い編集は修正されるのかな。
せっかくハイビジョンで撮影されているのだから、Blu-Rayなどの次世代メディアでも発売して欲しいな。
ドラマ 「のだめカンタービレ」 ミュージックガイドブック 2006年 12月号 [雑誌]
- 作者:
- 出版社/メーカー: ヤマハミュージックメディア
- 発売日: 2006/11/29
- メディア: 雑誌
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