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『天使と悪魔』 [Cinema]

※映画の感想・評論(もどき)の文章では基本的にストーリーに触れる部分があるため未見の方はご注意を。

2009年アメリカ
監督:ロン・ハワード
原作:ダン・ブラウン
音楽:ハンス・ジマー
出演:トム・ハンクス/ユアン・マクレガー/アイェレット・ゾラー/ステラン・スカルスガルト/ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ
評価:★★★☆☆

大ヒット作『ダ・ヴィンチ・コード』の続編である。ところが実際は原作の方ではこちらの「天使と悪魔」の方が先に発売されていたので、映画と小説では時間軸が逆になってしまったのだ。

今回その点を意識してのセリフの付け加えがあり、「ダ・ヴィンチ・コード」がカトリックから批判されたことをそのカトリックの総本山であるヴァチカンを舞台にする以上無視できなかったのだなあと思わせられた。

さて、原作の小説は「ダ・ヴィンチ・コード」のあとで購入していたもののずっと積ん読になっていて、読了したのはつい最近だった。小説の方は「ダ・ヴィンチ・コード」同様ほぼ1日の出来事をハードカバー上下2巻で展開するという非常に濃密なもので、ここでも宗教や今回は科学の面でも細かい蘊蓄にあふれ、知的好奇心を満たしながら先を読まないわけにはいかない気持ちにさせるジェットコースター小説だった。

天使と悪魔(上)

天使と悪魔(上)

  • 作者: ダン ブラウン
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2003/10/31
  • メディア: 単行本


映画の『ダ・ヴィンチ・コード』は原作のダイジェストになってしまって、原作のおもしろさを活かすことなくなんとなく盛り上がりに欠ける仕上がりとなってしまったのだが、この『天使と悪魔』はその轍を踏むことなく映画として原作を再構築し、登場人物さえも足し引きして、かなりスッキリとさせたのが功を奏したようだ。物語の展開もメリハリが出てきて映画としてのまとまりは前作よりも良かったように思う。小説の後半ラングドンがヘリから落下してなお無事でいるというかなり荒唐無稽なエピソードをやめたのも良かった。もちろん再構築したことでヴィットリアの役回りがかなり物足りないものとなってしまったのは物語のふくらみとしても残念だったけれど。

それでも…と思う。やはり映画だけを観てどこまで話が理解できるのだろうか。あるいは原作の持つ膨大な実在の美術品にからめたエピソードや蘊蓄の数々を理解することができるのだろうか、と。ただどうしてもそれは2時間18分の映画の中では難しいといわざるを得ないのだろう。気持ちとしてはもっとラングドンにいろいろと説明をしてもらいながら話が進むようにして欲しかったなあと思うのだけど、そういうのは前後編にするとかテレビシリーズにするとかしないと無理なのかも。

でも一方で、そう感じるのは原作を先に読んでしまっているからかも…という気持ちも何となく拭えずにいるのだ。もしかしたら原作を読んでいなくて、全く話の筋を知らなかったら、そうしたらもしかしたらもっとこの映画を楽しむことができたのではないだろうか、と。

ここが今回、映画用にキッチリ脚色した作品にもかかわらず、なんとなく先が読めて(原作読んだのだから当然だ)、観ながら「ああ、ここはあの場面か」「あれ、ここ少し変えてるね」などとのめり込まないで鑑賞することになってしまった要因かもしれず、そうであればちょっとまっとうな映画の評価ではないかなとも感じるので、なんだか歯がゆい気持ちが見終わったいまでも続いているのだ。

原作を知らずにこの映画を観た人はどう感じたのだろうか。



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コメント 1

u4

私は原作を読まずに映画を観る予定です。
ただ下手をしたら映画館では観ないでDVD化されてから家で観るぐらい先になるかもしれませんが。
by u4 (2009-06-06 12:21) 

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