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コクーン歌舞伎『東海道四谷怪談』 [Play]

またまた見てしまった『東海道四谷怪談』。前回は一昨年の夏、歌舞伎座での公演。そのことはこの記事でも書いた。そしてその前がコクーン歌舞伎の第1回公演だった。そのコクーンで12年ぶりに再演となった。

今回見たのは「南番」と銘打ったもので、これは通常の歌舞伎公演で演じられるものを串田和美が演出したものだ。一方「北番」呼ばれる演目もあり、これは普段上演されることの少ない後半の「三角屋敷の場」や「小仏小平住居の場」も描かれていて、実験的な演出もしているという。こちらも串田和美演出。

さて、感想。

歌舞伎は見たことがあるけれども、コクーン歌舞伎は初めてという連れが一緒だった。芝居好きでいろいろ大劇場から小劇場まで足を運んでいるようなのだが、その連れは十分満足していたようだった。で、自分はというと、正直言って第1回公演の方が面白かったかな。

串田演出をどうこう言うつもりはないけれど、どうなんだろう? そろそろその加減の見直しをしてもいいのかなあと思った。要するに、ここでやりたいことはなんなのか、それが良く伝わってこないということなのだ。

歌舞伎座や国立劇場は敷居が高い。けれど、実はとっても面白いお芝居がいっぱいあるんだよ、という歌舞伎にあまりなじみのないお客さんに、歌舞伎というもののとっかかりとして触れてもらいたい、というのがコクーン歌舞伎であるとするならば、あまり過剰な普段の歌舞伎から離れていくような演出はどうなんだろうと思うのだ。

もちろん、そういったことだけではなく、固定観念としてある“歌舞伎”というものだけじゃなく、何でもできるんだよということを試すのがコクーン歌舞伎だというのならそれはそれでもいいと思うけれど、今回の「南番」について言えば、どうもその辺がどっちつかずなような気がしたのだ。

第1回の時と比べても仕方ないけれど、役者の層も薄いし、いくら何でも主要キャスト以外が弱すぎて、もっとかっちり脇も固めないとなんとなく薄っぺらい印象にもなってしまう気がするし、美術も考えているようでただの手抜きっぽくも見えて、これも安普請のような感じを受けた。

猿之助のスーパー歌舞伎や昨年の蜷川演出の「十二夜」、そして現在も上演中の三谷幸喜演出PARCO歌舞伎「決闘高田馬場」など、新しい試みが色々でてきている。そのことは歌舞伎の世界では今に始まったことではなくて、三島由紀夫だって歌舞伎脚本を書いたくらいだし、そうやって常に時代を取り込んでいくのも歌舞伎なんだとは思う。コクーン歌舞伎を始め平成中村座など、勘三郎のおこなっていることもそうした流れの一環なんだと興味を持ってみてきたけれども、今回の公演内容を見るとちょっと寂しくなったな。上滑りしているような感じだ。

もっと面白くてもっと怖くて、もっとお岩さんの悲しさを感じる四谷怪談にできたはずなのに、表面的な物語になってしまって、人物の感情など芝居の奥底の部分が伝わってこなかったのが残念。

さて、四谷怪談は、歌舞伎以外にも1995年銀座セゾン劇場の平幹二朗円演出・主演の『四谷怪談』や2001年シアターコクーンでの蜷川幸雄演出『四谷怪談』なども見ているのだが、いずれも「三角屋敷」などをきっちり描いていた。歌舞伎でも上演時間の問題はあるかもしれないけれど、そのへんをちゃんと割愛しない通し上演というものをやってくれたらなあと思う。あと国立劇場じゃないと無理かもしれないけれど、初演の時のように『仮名手本忠臣蔵』と織り交ぜて通し上演するとか。どうせ実験的なことをするなら、こういうことを手がけて欲しいなあと思うのだ。


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Ren

はじめまして、TBさせていただきました。
初演は見ていないのですが今回の上演とても楽しみにしていました。
私が観たのは南番です。客席にお岩さんが現れたりあれこれ仕掛けが
たくさんあっておばけ屋敷に行ったみたいなおもしろさでした。
by Ren (2006-04-08 17:56) 

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