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『ラフ』 [Cinema]

※映画の感想・評論(もどき)の文章では基本的にストーリーに触れる部分があるため未見の方はご注意を。

2006年『ラフ』製作委員会
監督:大谷健太郎
脚本:金子ありさ
原作:あだち充
出演:長澤まさみ/速水もこみち/阿部力/石田卓也/市川由衣/八嶋智人/田丸麻紀/渡辺えり子/黒瀬真奈美
評価:★★☆☆☆

『タッチ』に続く、あだち充原作漫画の長澤まさみ主演による映画化第2弾。
原作連載当時は、『タッチ』の呪縛から脱しようとしていた作品かなあと思って読んでいた。結局野球のエピソードも入っているので、完全に脱し切れているわけでもないのだけれど、キャラクターの性格付けなどは、『タッチ』の主要人物のように、みんなが周りに気遣う優しい人たちという程でもなく、ほどほどに等身大ともいえる描き方だったので、結構楽しんで読んでいたし、好きな作品でもある。
 

ラフ (1)

ラフ (1)

  • 作者: あだち 充
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2006/06/16
  • メディア: コミック


 
前回の『タッチ』をそれなりに楽しめたので、今回も、予告やスチル写真などを見る限りは『タッチ』よりいいかもと思って期待していた。けれどそれは裏切られたかなというのが率直な感想。

2時間の映画に納めるために、原作のエピソードのいくつかは端折らなければならない。その点では結構いい具合のまとめ方になっていたと思う。でも緒方のエピソードの処理はどうなのかなあ。野球部じゃなくしてしまったからかも知れないけれど、あまり大和に言っている言葉に説得力がなくなっているようにも感じたのが惜しい。演じる石田卓也がなかなか良かっただけにもったいない気がした。

さて、その演じる役者なんだが、速水もこみちは期待はずれ。もともと大和は他のあだち充原作漫画と比較しても、まあまあ格好いい方だろう。けれどイメージが違いすぎる。映画なんだからイメージの違いは妥協するにしても、演技がダメだ。表情の種類が少ないので感情表現がもうひとつつかみにくいし、見ている側に伝わってこないのだ。「お前なんか嫌いだ」と言うところは、もう少しグッとくると締まったと思うんだけど。

ただ、この観客に迫ってこないというのは、役者のせいだけでもないように思うのだ。どうも演出自体ダメなんじゃないだろうか。細かいエピソードのつながりに、直前の話の感情がうまく流れていかないからぶつ切りになってしまって感じられ、登場人物や物語そのものに共感しにくく、傍観者としてスクリーンを眺めるような見方になってしまったように思う。

それからよくわからないのは地理的空間の把握。ここは一体どういう街で、日本選手権の会場はその街からどの程度離れているんだろう、とか。素直に見れば、ラストでの亜美とかおりの場面から、会場への移動を考えると、同じ街の中で行われているのかと思うのだけれど、映画館がつぶれているくらいだしそんなに都会じゃないはずなのに、ここで毎年日本選手権なの?…とか、仲西が入院した病院は海のそばみたいだけど、学校帰りにいける距離なのかなあとか…架空の話であってもその街の、その世界のあるべき姿というか、空間イメージはしっかりないと、見ていて時間や距離感に不思議になるし、そこから嘘くささがにじんでくるので物語としても入り込めなくなってしまうのだ。

予算の問題もあるしロケ地を探すのも大変なのもわかるけれど、物語の骨格なんだから、そういう部分はおろそかにして欲しくないんだよなあ。

あと水泳の場面の撮影も頑張ったみたいだけれど、それぞれのカット単体で見ると確かにおっ?と思わせるものもあった。しかしそれをつなげてみると、カットごとの流れがスムーズにいっていないようにも思えた。なので、レースとしての緊迫感がそがれていたようにも思う。

加えて大和がウォークマンを使っていて、現代ではさすがにテープはないだろうと思うし、その点は、じいちゃんからもらったので大事に使っているし、験担ぎでもあるし、それで古いからよく止まってしまう、という話の流れにうまく合わせていたようにも思う。けれど最後は亜美がテープにメッセージを吹き込むのだ。みんながみんなカセットテープが使えるオーディオ機器をもっているのだろうか。現代で描くならいっそのことMDとかにしてしまった方がよかったかもしれないし、テープにこだわるなら無理に現代の話にしないで、80年代の話にしちゃっても良かったのではないかなあ。あのころならテープに好きな曲を入れて友達にあげるという文化もあったし、『世界の中心で、愛をさけぶ』だってそうでしょ。今はそういうのないんじゃないのかな。しかも自分の声を録音して相手に届けるなんて…。このへんは10代20代の観客の感想を聞いてみたいものだ。

悪いことばかり書いてきたけれど、期待値が高すぎたから余計にいろいろ思ってしまったのかもしれない。単純にアイドル青春映画としたら、主演の長澤まさみの魅力はよく出ていたと思うし、その点は及第点なのかな。
 


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