訃報:スペシャルアニメーター 金田伊功死去 [Comic / Animation]
非常に残念なニュース。
金田伊功氏死去 アニメーター
ご本人がキャラクターデザインや作画監督を主にしていたわけでもないので現在ではあまり表だって名前は知られていないかもしれないが、『宇宙戦艦ヤマト』に始まるアニメブームの中で独特の動きやキャラクターのパースの付いた勢いのある絵を描き、新機軸を打ち出し後に多大なる影響を与えたアニメーターが金田伊功(かなだよしのり)なのである。
当時のアニメファンなら恐らくその名前を知らない人はいないだろうというくらい有名なはずだ。あるいはその名前は知らなかったとしても、その作風に触れてないということはないだろうと思う。
よく知られた有名なところでは劇場版『銀河鉄道999』のラストの惑星メーテル崩壊のシークエンスでの爆発の煙の表現や足元が崩れて奈落に落ちそうになるメーテルを助ける鉄郎の場面がそうだし、続編の『さよなら銀河鉄道999』の同じくラストに出てくる女王プロメシュームのイメージ映像もそうだ。また『幻魔大戦』ではスタッフとしてのその肩書きが“スペシャルアニメーター”となっていて、超能力によるオーラの表現だったり炎の龍の動きを一手に引き受けて見事な迫力ある終盤の戦闘シーンを描き出したのだった。
その後ジブリ作品でも『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』でも独特のスピード感ある表現を生み出し、ベテラン宮崎駿監督からも信頼されていたというのがわかる。
劇場作品だけでなくテレビで印象的なのはオープニング映像やロボットアニメの戦闘シーンなどであろうか。特に「銀河旋風ブライガー」のオープニングは素晴らしく、先日このブログ記事でも紹介した島本和彦の「アオイホノオ」でもそのことに触れていた。また79年放送開始の「サイボーグ009」でのオープニングも印象に残っている。
日本のアニメ界は良くも悪くも手塚治虫がはじめた「鉄腕アトム」での製作体制を引きずっている。それは週1本新作を製作するために極力描く枚数を減らしていこうというものだ。そのため1枚の絵を3コマ撮影するという3コマ撮りが主流となり、1秒8枚の絵でものを動かしていくという方法で、通常そのままではやや動きがギクシャクしたものとなってしまう。だからそれを感じさせないために動く部分に効果線を入れて速い動きを印象づけたり、止まってしゃべっている時は顔の絵は一切動かさず瞬きと唇しか動かさないなどの様々な工夫が生まれてきたのだ。
そんな中でアクションの動きを迫力あるものにするために生まれた手法が金田伊功の光や煙の表現であったのだろうと思う。また人物やロボットの激しいアクションを伴った動きでも、極端なパースを付けた絵にしたり、動きに入る前に一瞬のタメを作ったりして、独自の緩急を付けることで、コマが少なくてもあれよあれよという間の目にもとまらぬ派手なアクションがその場で展開しているかのような映像が表現できたのだと思う。
ただ煙やメカならまだいいが、時にキャラクターについては明らかにキャラクターデザイン画とは絵のタッチが違うとわかる時があり、そこが気になるといえば気になるとも言えるのだが、決して下手な絵ではないので動きの流れの中で見きれてしまうということはあったかな。
オリジナルの作品で「バース」という作品があり、これはもともと80年代に宮崎駿が「ナウシカ」を描いたり、安彦良和が「アリオン」を描いたりするなど、アニメーターが漫画を描くという風潮ができてきた中で金田伊功が漫画として描いた作品がもととなっているオリジナルアニメだ。実はこの原作の漫画の1巻だけを今でも持っている。なぜ1巻だけかというと、興味があって買ったものの実はあんまり面白くなかったのと、絵が鉛筆で描いたであろう原稿をコピーしてそれにべた塗りやスクリーントーンを貼ったというような、結構整理されてない粗い絵で、読みにくかったというのがその要因なのだが、引っ張り出して改めてみてみたところ、やっぱりアニメーターだけあって、一コマ一コマが動きを感じさせるアニメの原画のような絵で、漫画としては読みにくくても、絵のすごさはあったのだなあと感じいってしまった。
しかし57歳。まだまだ活躍できる若さでの死去は本当に残念である。その気持ちは同じ業界で働く仲間達に衝撃となって伝わっているのだろう。お別れの会が来月30日に行われるそうだが、その発起人の方々の名前がものすごく、日本のアニメを背負って立つ第一人者の方達がずらっと並んでいるのだ。
金田伊功を送る会
その功績がどれほどのものであったかという証なのだろうと思う。
ご冥福をお祈りします。
金田伊功氏死去 アニメーター
ご本人がキャラクターデザインや作画監督を主にしていたわけでもないので現在ではあまり表だって名前は知られていないかもしれないが、『宇宙戦艦ヤマト』に始まるアニメブームの中で独特の動きやキャラクターのパースの付いた勢いのある絵を描き、新機軸を打ち出し後に多大なる影響を与えたアニメーターが金田伊功(かなだよしのり)なのである。
当時のアニメファンなら恐らくその名前を知らない人はいないだろうというくらい有名なはずだ。あるいはその名前は知らなかったとしても、その作風に触れてないということはないだろうと思う。
よく知られた有名なところでは劇場版『銀河鉄道999』のラストの惑星メーテル崩壊のシークエンスでの爆発の煙の表現や足元が崩れて奈落に落ちそうになるメーテルを助ける鉄郎の場面がそうだし、続編の『さよなら銀河鉄道999』の同じくラストに出てくる女王プロメシュームのイメージ映像もそうだ。また『幻魔大戦』ではスタッフとしてのその肩書きが“スペシャルアニメーター”となっていて、超能力によるオーラの表現だったり炎の龍の動きを一手に引き受けて見事な迫力ある終盤の戦闘シーンを描き出したのだった。
その後ジブリ作品でも『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』でも独特のスピード感ある表現を生み出し、ベテラン宮崎駿監督からも信頼されていたというのがわかる。
劇場作品だけでなくテレビで印象的なのはオープニング映像やロボットアニメの戦闘シーンなどであろうか。特に「銀河旋風ブライガー」のオープニングは素晴らしく、先日このブログ記事でも紹介した島本和彦の「アオイホノオ」でもそのことに触れていた。また79年放送開始の「サイボーグ009」でのオープニングも印象に残っている。
日本のアニメ界は良くも悪くも手塚治虫がはじめた「鉄腕アトム」での製作体制を引きずっている。それは週1本新作を製作するために極力描く枚数を減らしていこうというものだ。そのため1枚の絵を3コマ撮影するという3コマ撮りが主流となり、1秒8枚の絵でものを動かしていくという方法で、通常そのままではやや動きがギクシャクしたものとなってしまう。だからそれを感じさせないために動く部分に効果線を入れて速い動きを印象づけたり、止まってしゃべっている時は顔の絵は一切動かさず瞬きと唇しか動かさないなどの様々な工夫が生まれてきたのだ。
そんな中でアクションの動きを迫力あるものにするために生まれた手法が金田伊功の光や煙の表現であったのだろうと思う。また人物やロボットの激しいアクションを伴った動きでも、極端なパースを付けた絵にしたり、動きに入る前に一瞬のタメを作ったりして、独自の緩急を付けることで、コマが少なくてもあれよあれよという間の目にもとまらぬ派手なアクションがその場で展開しているかのような映像が表現できたのだと思う。
ただ煙やメカならまだいいが、時にキャラクターについては明らかにキャラクターデザイン画とは絵のタッチが違うとわかる時があり、そこが気になるといえば気になるとも言えるのだが、決して下手な絵ではないので動きの流れの中で見きれてしまうということはあったかな。
オリジナルの作品で「バース」という作品があり、これはもともと80年代に宮崎駿が「ナウシカ」を描いたり、安彦良和が「アリオン」を描いたりするなど、アニメーターが漫画を描くという風潮ができてきた中で金田伊功が漫画として描いた作品がもととなっているオリジナルアニメだ。実はこの原作の漫画の1巻だけを今でも持っている。なぜ1巻だけかというと、興味があって買ったものの実はあんまり面白くなかったのと、絵が鉛筆で描いたであろう原稿をコピーしてそれにべた塗りやスクリーントーンを貼ったというような、結構整理されてない粗い絵で、読みにくかったというのがその要因なのだが、引っ張り出して改めてみてみたところ、やっぱりアニメーターだけあって、一コマ一コマが動きを感じさせるアニメの原画のような絵で、漫画としては読みにくくても、絵のすごさはあったのだなあと感じいってしまった。
しかし57歳。まだまだ活躍できる若さでの死去は本当に残念である。その気持ちは同じ業界で働く仲間達に衝撃となって伝わっているのだろう。お別れの会が来月30日に行われるそうだが、その発起人の方々の名前がものすごく、日本のアニメを背負って立つ第一人者の方達がずらっと並んでいるのだ。
金田伊功を送る会
その功績がどれほどのものであったかという証なのだろうと思う。
ご冥福をお祈りします。
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