SSブログ

歌舞伎座さよなら公演「九月大歌舞伎」 [Play]

昨日は1日歌舞伎三昧。建て替えによる来年4月までの歌舞伎座さよなら公演「九月大歌舞伎」の昼の部と夜の部を一気に鑑賞してきた。

ここ数年は9月といえば初代中村吉右衛門を偲んで「秀山祭」と銘打った公演であったのだが、今年は「さよなら公演」を前面に出すために、名称としての「秀山祭」は使われなかった。けれどゆかりの演目が並び「秀山祭」みたいなものではある。
 
189.jpg
 
さてまずは昼の部から。

『竜馬がゆく 最後の一日』
テレビ東京の正月時代劇で坂本竜馬を演じて以来、舞台でも「立志篇」「風雲篇」と主演を演じてきた市川染五郎が今回も竜馬役。暗殺の晩を描く今作で一応の完結となるようだ。竜馬とともに殺されてしまう中岡慎太郎が尾上松録。松録はどうも舌足らずな台詞回しが気になっていたのだけれど、最近それほどでもなく感じるのは発声をいろいろと研究でもしたのであろうか。力強く男らしく非常に好感が持てた。ラスト幕切れは客席がシンと静まりかえってしまうほどの二人の熱演。なかなかおもしろかった。あえて難をあげれば場面転換の回数が多すぎかな。回り舞台がしょっちゅう動いている感じで、気持ちが途絶えてしまうような印象もあり、もう少し上手くまとめられないかなあと思った。

『時今也桔梗旗揚』
これが今回「秀山を偲ぶ所縁の狂言」との副題が付いて上演。初代中村吉右衛門の当り役である武智光秀を当代の吉右衛門が演じている。通常「本能寺馬盥の場」から「愛宕山連歌の場」までの上演形態が多いのだが、初代吉右衛門がその前の「饗応の場」から上演していたこともあって、それにならい今回も上記三場の上演である。

「饗応の場」があることで、確かに同じような春永のいじめが続いてなんとなく飽きちゃうような印象もなくはないのだけれど、それよりもそのいじめに耐えに耐え抜く光秀の気持ちの方がふくれあがっていい効果を出しているなと感じた。その光秀を演じる吉右衛門の耐える演技が悲痛さを感じさせ素晴らしい。

もう上演期間の半分を過ぎているのに春永演じる富十郎にプロンプターが付いていたようだ。そのため台詞が途切れ途切れに感じるところもあってやや興ざめ。公演期間前半ならいざ知らず、19日だからねえ。それと富十郎ってよく通るいい声しているのだけど、この芝居には何となく合わない印象。春永の役ってちょっと前なら十七代目市村羽左衛門がよく演じていたみたいだけど確かに似合ってそうだなあ。あとは最近では当代の團十郎が多いみたい。これも良さそう。

『お祭り』
通常は赤坂日枝神社、神田明神のお祭りを題材にした清元の踊りなのだけれど、今回は「さよなら歌舞伎座」。歌舞伎座がある木挽町でのお祭りという形にして、「名残惜木挽の賑」という副題が付いた特別版。

中心となる芸者役の中村芝翫が発熱のためここ数日は息子の中村福助が代役だったということで心配していたのだけれど、なんのアナウンスもなく開幕したのでもしやと思ったら芝翫が舞台にいたのでホッと安心。重い芝居の合間の息抜きとして賑やかに楽しめた。

『河内山』
昼の部長いなあ。ここで最後が幸四郎の「河内山」。うーん、やっぱりなあ…歌舞伎の幸四郎に対しては観る前から偏った見方をついしてしまうのが良くないのかなあ。でもなんとなく台詞の妙な抑揚が聞き取りにくいし、なんだか周りとのアンサンブルができてないというか一人芝居のような空間ができているような気もするし…。

というかそもそも「河内山」って初見なんだけど、どうもそんなにおもしろさを感じなかったなあ。それが演じている幸四郎のせいかどうかは他の役者で見直してみないことには何とも言えないけれど。

続いて夜の部。

『浮世柄比翼稲妻』
今回は「鞘当」と「鈴ヶ森」。まずは「鞘当」。染五郎と松録と中村芝雀。吉原仲之町の華やかな雰囲気を楽しむだけのもの。和事と荒事の歌舞伎風味を味わう。

次の「鈴ヶ森」は幡随院長兵衛の江戸の粋を感じるお芝居。吉右衛門が気っ風のいい親分を気持ちよく演じている感じが良く伝わってきてなかなか面白かったけれど、芝居としては前半がやや長く冗長な印象。

『勧進帳』
今回一番期待していたのがこれ。なにせ幸四郎の弁慶に吉右衛門の富樫、染五郎の義経と、兄弟親子のがっぷり組んだ芝居が堪能できると思ったからだった。ところがダメですわ。何がダメって幸四郎の弁慶。いくら1000回以上演じてこようと、この弁慶はないだろう。どうして自分一人だけで盛り上がっちゃうような妙な芝居をするのだろうか。富樫がいてこその弁慶。相手を意識しての台詞の間とかとか表現があっても良さそうなものなのに、自分一人だけの世界に酔いしれているような感じ。だから四天王とも一体な感じがしないし、ましてや義経との深い信頼に基づいた主従関係というのもあまり感じられなかったのだ。

いやあ、もう幸四郎の演技に誰か何か言えるような幹部もあまりいないだろうし、ちょっとこのままはまずくないかなあ。せっかく吉右衛門の富樫が良かったのになあ。うーん…明らかに今年2月の吉右衛門が演じた弁慶の方が良かったもんなあ。

『松竹梅湯島掛額』
「法界坊」などにも似た喜劇。以外や初代吉右衛門は法界坊やこの作品の紅長のような笑いをとる役も得意としていたようだ。当代の吉右衛門の法界坊は観たことがあって、なかなかに愛嬌があり面白かったけれど、この作品でも軽妙な演技で会場の笑いをとっていた。直前の富樫とは大違いだし、今月は4つの芝居に出演していて吉右衛門も八面六臂の大活躍である。

最後は「櫓のお七」。福助が人形振りで演じる。これもなかなかに悲恋の感情が伝わってきて良かった。

今月は充実の舞台。でも幸四郎がねぇ…。ま、ご贔屓の吉右衛門が良かったからいいとするかな。でもせっかく最近兄弟二人で同じ芝居に出演することが増えてきたので、ぜひ幸四郎にもいいなって思わせて欲しいんだけどなあ。

さて来月は夜の部の「義経千本桜」の通しで吉右衛門が知盛を演じるのでこれも観たいな。今月のような長い連休ないし、観に行く時間がとれるかどうかが問題だなあ。



nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。