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さようなら新宿プラザ劇場 [Cinema]

新宿歌舞伎町のランドマークとして大衆演劇の中心として君臨してきた新宿コマ劇場が今年いっぱいで閉館取り壊しとなる。このことは大物演歌歌手の座長公演などが行われてきた老舗劇場だということもあり、テレビなどでも大きなニュースとして伝えられてきたが、その隣の新宿東宝会館も同時に取り壊しになるという話はほとんど伝わってこなかった。

その新宿東宝会館の中にある座席数1,044席を誇る東宝直営の大劇場が新宿プラザ劇場である。1969年にオープンし、今年で39年。自分とほぼ同じ年齢を歩んできたことを初めて知った。

当時はテレビに映画が押され、いわゆる大型映画のいろいろな仕組みが劇場に登場してきた時代だったのだろう。テアトル東京のシネラマもそうだし、シネマスコープ、ビスタビジョン、70mmプリントに立体音響。そうした中で、この新宿プラザ劇場は“D-150(ディメンション150)”という方式の上映形態を取り入れた劇場であった。超大型で中心部が奥に深く湾曲したスクリーンは、まるで投影されている映像に囲まれるかのような臨場感があり、迫力のある映画体験ができるものであった。

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そんな映画館に初めて足を運んだのは76年公開の『キングコング』だった。ジェフ・ブリッジス、ジェシカ・ラング主演、ジョン・ギラーミン監督によるリメイク作品である。年末だったので77年の正月映画という方が時期としてはわかりやすいかもしれない。小学2年生だった当時、それまで東映まんが祭りなどを映画館に見に行くことはあっても、大人が観るような映画に連れて行ってもらうことはまだなかった。当時はロードショー時に日本語吹き替え版上映などもないので、小学校低学年には洋画を観るのはさらにハードルの高いものであったといえるだろう。

にもかかわらずテレビで連日話題作として取り上げられてどうしても観たかったのだろうと思うが、若い頃映画館通いをしていたという母を説き伏せ、姉と3人で冬休み中に出かけたのだった。それがこの新宿プラザ劇場。77年1月5日。西武新宿線沿線に住んでいると、新宿の映画館といえば歌舞伎町の方が近いので歌舞伎町にあるこの劇場を選んだのかもしれない。また美空ひばりが好きな母なので、コマ劇場の隣ということから場所がわかりやすかったのかもしれない。

当日のことはいまだにうっすら記憶に残っている。赤い絨毯のロビーの非日常感。広く天井の高い場内。話題作ということで混雑しており、座れた座席は前から2列目で、見上げたスクリーンの大きさがひときわであった。

字幕だってすべて理解したわけではないのだが、わかりやすいストーリーにとにかく没頭し、最後のコングの消えゆく心臓の音にとにかく哀しい気持ちになったものだった。そしてそれ以後、映画館での映画体験にのめり込んでいくこととなるのだ。映画好きとなった原点がこの映画館なのだ。

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その映画館がなくなってしまう。しかも隣のコマ劇場が年内いっぱいなのに11月7日をもって閉館だという。そのさよなら上映が昨日11月1日より行われ、1週間日替わりで大スクリーンで観たくなる映画がラインナップされた。とはいえ、東宝直営の、しかもかつては有楽座や日比谷映画、そしてその後は日本劇場を頂点とする東宝洋画チェーンの新宿地区No1劇場のラストショートしてはなんとなく寂しさを感じなくもない。

もちろんこれでも今現在上映可能なプリントをかき集めてきたのだろうが、願わくば1作品でもいいから70mmプリントの映画でもあったらなあと残念な気持ちだ。それと唯一『スター・ウォーズ』6作品をロードショー公開した劇場としては、このラストショーの中に『スター・ウォーズ』がないのも寂しい。しかし当然上映作品選定は苦労したことだろう。上映できるプリントの問題も考えれば、こういうイベントを開催してファンに感謝しようとしただけでも嬉しい。
 
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初日の『ベン・ハー』(この作品は実は新宿プラザ劇場では上映したことがないらしい)は観に行けなかったので、2日目の今日、『2001年宇宙の旅』を観に行った。10時からの朝1回目の上映だ。表に掲げられた看板の挨拶が哀しい。そして場内入るが、あれほど豪華に感じた劇場も、さすがに40年近く経ち、古さを感じざるを得ない。しかもサヨナラ上映ということで、もっと混んでいるかと思ったら、それほどでもなく空席も目立ち、なんだかイベントとしての華やいだ雰囲気は全くなくただただ寂しい空気が流れていたような気がする。

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新宿で1,000席を超えるあれだけの大きさの映画館とはいえ、日比谷映画街の有楽座などがなくなった頃と既に時代が変わってしまって、なくなることを惜しむ人たちさえ少なくなってしまったことに、より一層寂しさを感じてしまった。

映画は上映プリントの状態も良くなく、キズも目立ち、なにより既にD-150型式の湾曲したスクリーンは大分前に改装して取り替えられ、少しカーブした平面スクリーンに変わってしまっていた。いったいいつから変わってしまったのだろう。調べたみたら最後にここを訪れたのは『スター・ウォーズ/エピソード1』の先行オールナイト上映の時だった。その時既にスクリーンが変わっていたかどうかは気付かなかったが、99年の7月のことだからもう9年も足を運んでいなかったことになるのか…。懐かしんだところで自分自身もそれだけ出かけていなかったのだ。

しかし思い出の映画館とはいえ、そこを選択せず観に行かなかった理由は今日改めてはっきりしたともいえる。ワンスロープの大きな空間は迫力ある映画を観るには最適なものの、デジタル音響などの細かい設計をされた映画を観るには残響も大きく音場が安定しない。スクリーンはかつては大きなものと感じたが、今ではシネコンでもここより大きなスクリーンが存在するくらいになっていて、かならずしもここでなければということではなくなったしまった。そして上映中の場内も完全に暗くはならず、どうしてもスクリーンがやや明るく浅い色合いになってしまうのもシネコンを体験してしまうと物足りなさを感じてしまうのだ。また階段状の座席配置のせいで座席の前後間隔が広げられず、最近ではかなり狭い部類の座席配置が快適な鑑賞環境とは言えなくなってきているのも事実だ。

そういう意味で、閉館は時代の流れの中である種仕方がなくもあり、避けられないことでもあったのだろう。

今後、隣のコマ劇場と合わせ、このエリアがどうなるかまだ決まってはいないようだ。映画館といっても新宿には既にバルト9やピカデリーなどのシネコンが誕生し、スクリーン数としては飽和状態のような気もするから、もしかすると映画館はもうできないかもしれない。果たしてどうなっていくのだろうか…。

最後に、ここで観た映画を記録からたどってみようと思う。

1977年 キングコング
1982年 レイダース/失われた《聖櫃》
1983年 幻魔大戦
1983年 スター・ウォーズ/ジェダイの復讐
1983年 里見八犬伝
1984年 さよならジュピター
1984年 インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説
1985年 007/美しき獲物たち
1985年 早春物語、二代目はクリスチャン
1985年 バック・トゥ・ザ・フューチャー
1987年 アンタッチャブル
1988年 ロジャー・ラビット
1989年 インディ・ジョーンズ/最後の聖戦
1989年 007/消されたライセンス
1990年 バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2
1990年 バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3
1991年 ゴッドファーザー PART Ⅲ
1991年 バックドラフト
1991年 ターミネーター2
1992年 ドラキュラ
1993年 ア・フュー・グッド・メン
1993年 ジュラシック・パーク
1994年 ライオン・キング
1995年 フォレスト・ガンプ/一期一会
1995年 ダイ・ハード3
1995年 クリムゾン・タイド
1996年 007/ゴールデンアイ
1996年 ツイスター
1996年 戦火の勇気
1997年 インデペンデンス・デイ
1997年 エアフォース・ワン
1999年 スター・ウォーズ/エピソード1 ファントム・メナス
2008年 2001年宇宙の旅

自分が映画好きになった原点の劇場であり、その後多くの話題作を観た劇場であり、ほぼ同じ年齢を歩んできた劇場がなくなるというのは、どんな事情であれやっぱり寂しい…。

ありがとう、新宿プラザ劇場。そしてさようなら。


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『歩いても 歩いても』 [Cinema]

※映画の感想・評論(もどき)の文章では基本的にストーリーに触れる部分があるため未見の方はご注意を。

2008年「歩いても 歩いても」製作委員会
原作・脚本・編集・監督:是枝裕和
音楽:ゴンチチ
出演:阿部寛/夏川結衣/YOU/高橋和也/田中祥平/寺島進/加藤治子/樹木希林/原田芳雄
評価:★★★★★

夏前に公開され、観たいと思っていたのに観に行けないまま公開が終わっていたこの作品。少し離れたシネコンで1週間だけの上映があったので観に行ってきた。

良かった。観て良かった。

本当にドラマとして何か事件があるわけではない。むしろ淡々とした日常の風景が描かれるだけだ。ありふれた家族の約2日間。ありふれていないように見えるのはその家の長男が若くして死んでいるということだけだろう。でも家族の中の誰かの死があり、その命日に家族が集まってくるという光景はどこにでもあるはずだ。そういうおそらくは誰もが自分の経験の中でこういう状況あるよねと思ってしまう家族の生々しさが凝縮されて描かれている。まずはそのディテールに脱帽する。

しかもそういう細かい演出を、作為的に感じさせずにサラッと流して表現しているところがすごい。ベテランの役者陣が出演しているにもかかわらず、その辺の身近にいる家族のドキュメンタリーに見えてしまうのはなぜだろう。そしてドラマとしての盛り上がりが特にないのに最後まで飽きさせずに見せきってしまう映画としての強さにも感心させられてしまう。

ひとえに単にひとつのストーリーを追おうとする物語ではなく、日常風景の切り取りのように話される話題は細切れでどんどんと変わっていき、しかもその端々にその人物の過去生きてきた人生や性格が感じ取られる情報量の多さが画面に釘付けにするからかもしれない。

説明的なセリフもほとんどない。唯一説明っぽいなと感じたのはラストのバスの中での阿部寛の「いつもちょっと間に合わない」というセリフくらいだ。あとは本当に家族の中でいつも何となく交わされているような言葉。でもその裏にはいろいろな感情もあり気遣いもあり…。そういうところが本当にまるで自分の家の出来事にようにも感じられ、時に見ていて苦しく切なくなるような感覚にも襲われるのだ。

冒頭の料理をしながらの母と娘の会話もまるで自分の母と姉を見ているようだし、40近くになっても息子は子供でしかなく、なにかというと世話を焼こうとする母。写真を見て昔話をするとどうしてこんなことまで、と思うくらいつらつらと細かいことを覚えていて、しかも同じ写真でいつも同じ話題をする母。陽射しの強い日のお墓参りで、墓石に水をかけながら「暑かったでしょ」と声をかける母。大勢の中ではなかなか会話がぎくしゃくしがちなのに、1対1になると相手を気遣って実は心配に思っている父。いる時は愛想良く会話しているので仲良さそうに思っても、いなくなると結構辛辣な会話をしてしまうのも家族という安心感からか…。

ドラマの盛り上がりが特にないと書いたけれど、あえて言うなら部屋に紛れ込んできた紋黄蝶を死んだ長男だと思って追いかける樹木希林の姿はこの映画のピークだろう。あの場面はそれまでの母の姿から一変し、阿部寛演じる息子と同様見たことのない母の姿に驚き動揺されられるのだ。そして死んだ長男によって助けられた海でおぼれた子供が命日に線香をあげに毎年きているのだが、その相手に投げかける言葉も、どうしてそんなことをするのかという想いも、普段は明るく振る舞い表に出ないが息子を亡くしてしまったという悲しみの強さが深く刻み込まれているのだと言うことを物語り、涙が自然とあふれ出してきた。

親の老いを感じる瞬間ってどういう時なのか、たまたまはなった言葉の鋭さから感じる普段見せない親の想い。そして何気なく交わした約束は、また今度と引き延ばしているうちに果たせなくなり、その相手は死んでいなくなってしまう。それでも家族の営みは日々の暮らしを過ごしながら着実に前に進んでいく…。

なんだかいっぱい書いてもあんまりこの作品で感じたことを整理して書くことができないもどかしさを感じている。しばらくじっくり映画の空気をかみしめていたいと思う…そんな良質の日本映画である。
 
歩いても歩いても

歩いても歩いても

  • 作者: 是枝 裕和
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2008/05
  • メディア: 単行本


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ポール・ニューマン死去 [Cinema]

衝撃のニュース。

ポール・ニューマンさん死去 「明日に向って撃て!」

非常に残念で悲しいニュースだ。引退を発表した時にも記事を書いたけれど、大好きな俳優の一人であり、洋画に興味持ちはじめてからいろいろと見始めた頃に、スティーブ・マックイーン、ロバート・レッドフォードらと並んでポール・ニューマンの出演作品で、派手目のエンターテインメント作品だけではなく、ドラマと演技を楽しむということを教わったような気もするだけに本当に悲しい。

ご冥福をお祈りします。
 
『名優たちの軌跡』 ポール・ニューマン ベスト・パフォーマンス・コレクション

『名優たちの軌跡』 ポール・ニューマン ベスト・パフォーマンス・コレクション

  • 出版社/メーカー: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
  • メディア: DVD

 
評決

評決

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: DVD

 
ハスラー

ハスラー

  • 出版社/メーカー: 20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント
  • メディア: DVD

 
スティング

スティング

  • 出版社/メーカー: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
  • メディア: DVD

 
暴力脱獄 特別版

暴力脱獄 特別版

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD

 
明日に向って撃て! (特別編) (ベストヒット・セレクション)

明日に向って撃て! (特別編) (ベストヒット・セレクション)

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: DVD

 
ハスラー 2

ハスラー 2

  • 出版社/メーカー: ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
  • メディア: DVD

 
タワーリング・インフェルノ

タワーリング・インフェルノ

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD

 
カーズ (Blu-ray Disc)

カーズ (Blu-ray Disc)

  • 出版社/メーカー: ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメント
  • メディア: Blu-ray


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『崖の上のポニョ』 [Cinema]

※映画の感想・評論(もどき)の文章では基本的にストーリーに触れる部分があるため未見の方はご注意を。

2008年スタジオジブリ・日本テレビ・電通・博報堂DYMP・ディズニー・三菱商事・東宝
原作・脚本・監督:宮崎駿
音楽:久石譲
声の出演:山口智子/長嶋一茂/天海祐希/所ジョージ/奈良柚莉愛/土井洋輝/柊瑠美/矢野顕子/吉行和子/奈良岡朋子
評価:★★★★★

先日NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組で通常枠を超えてスペシャルとして「宮崎駿のすべて〜「ポニョ」密着300日〜」というのが放送された。朝、新聞を見てこの番組を知り、とても気になったのでひとまず録画しておいたのだ。けれどその新聞の番組紹介文の中に、映画のラストに触れるところがあるので未見の方は云々…と書かれてあったから、録画したまま見ないでいたのだった。

気になる。とても気になる番組だったので、早く見たくて今日映画を見てきた。あ、いや、映画は元々見たかったのだ。ドキュメンタリーを見たいが為に映画を見たわけではないのだ。一応。
 
スタジオジブリ絵コンテ全集 (16)

スタジオジブリ絵コンテ全集 (16)

  • 作者: 宮崎 駿
  • 出版社/メーカー: スタジオジブリ
  • 発売日: 2008/08
  • メディア: 単行本

 
宮崎駿の作品はいつの頃からか全国民が待ち望む映画のような雰囲気になってしまった。そのことは決して悪いこととは思わないけれど、過剰な期待が重荷になったり、ずいぶんと考えすぎのような映画になったりしてきた面はないかなと感じていた。特に前作の『ハウルの動く城』は正直その映像の精密さには驚かされたものの、作品の内容自体がスッと体に入ってくる感じはなく、ちょっと残念な印象があったからだ。

今回、事前情報はほとんど目にしないようにしていたのだけれど、昔の“漫画映画”のイメージを取り戻そうとしているというような話は聞いていたので、かつて東映まんがまつりのオリジナル長編で上映された『長靴をはいた猫』『どうぶつ宝島』のような底抜けに楽しめる作品か、近作でも『となりのトトロ』のように過剰なテーマ性が前面に出すぎない子供が感覚で楽しめる映画になっているのではないかと想像していた。

さて、感想だが…いまだになんと言って言葉に表したらいいのか、それがよく見つからないでいる。とにかく悪人は出てこないし、変に疑り深い人物も出てこない。不思議な出来事も普通に受け入れてしまうファンタジックな世界だし、見るものもそれを理屈でなく受け入れてしまうしかない。というか見ている最中、あんまりそういう理屈を考えることをしないで最後まで観ることができたのだ。不思議なのだけど、とにかくいろいろな場面で涙腺を刺激して涙が出てきたし、これはなんだろうと考えてもみたのだけど、子供が発する純粋な行動や感情がストレートに溢れていて、特にそういう場面が胸に突き刺さるように感情を揺さぶってきたのだ。

一例を挙げれば、ポニョが父親のフジモトに連れ戻され、消えてしまったポニョを探して泣き叫ぶ宗介の場面や、人間になったポニョが宗介のもとに向かうため波の上を走っている場面やそのあとようやく再会した宗介に跳びついておもいっきり抱きしめるところ…あげればきりがないけれど、子供がちょっとしたことに気づき驚き感動するその感情や仕草をとても繊細な表現で表しているところにとにかく感心するし、『となりのトトロ』でもそうだったけれどそういう細かい動きの演出はあんまり観ている時は特に意識しないで自然に表現されているというところがまたすごいなと思う。

で、このあたりのところは最初にあげたNHKの「宮崎駿のすべて〜「ポニョ」密着300日〜」で、そうしたキャラクターの表情や動きに、人一倍の神経を使い、相手がベテランアニメーターであろうが強烈にダメ出しをし、すべてのカットをチェックして修正するという気の遠くなる作業を通じてあれだけの作品に仕上がっていくのだと納得。もともと中学・高校時代にファーストガンダム劇場版から発生した第二次アニメブームに身をさらした自分にとっては、高畑勲・宮崎駿・大塚康生らの映画製作過程における仕事ぶりというのは、当時急激に増えたアニメ関連本などで知ってはいたけれど、映像として、その現場をみるのは今回が初めてだったので、67歳にしてあのパワーと、作品の完成度に対するこだわりというのがひしひしと伝わってきて、これは後に続くアニメーターで、はたしてここまでの人はいるだろうかと、高畑・宮崎・大塚世代の人たちがいなくなったあとの日本のアニメ界がどうなっていくか、本当に心配になってしまった。

ただアニメが好きというだけではあそこまでとてもできないし、そういうアニメ好きがアニメ付きのための作品を作り続けて何となくおしゃれな感じの日本のアニメが海外でも受けて、ちょっと勘違いをしちゃっているなという印象をずっと感じているのだけれど、そうではない本当に子供が楽しめる作品を丹念な絵作りで描いていく職人気質のクリエイターが出現しないと、あるいは後継者が育っていかないと、ちょっと先行き心配どころではないなあという思いが涌いてくるのだ。

話が大分それてしまったが、今回の作品に関していうと、後から考えれば消化不良とか説明不足とかいろいろ言いたくなるところは確かに出てくる。出てくるのだが、たぶん明らかにそういう理屈ではないところで感じる映画なだろうと思うし、少なくとも自分自身は、本当に未だ説明できない感情を刺激されて…それは手書きアニメの映像のすごさなのか、人物などの細かい描写によるものなのかわからないけれど、見終わって相当放心した感じになったし楽しく鑑賞することができた。こうした感覚になったのは宮崎作品では『となりのトトロ』以来だ。

ジブリ作品としてみると最近の作品群から期待される方向性にこの作品はないし、その意味で期待はずれやら意味不明やらいろいろ言われても仕方ないところもあるかもしれない。でもご都合主義的な理屈を付けて無理矢理ストーリーを明瞭にしようとしなかったところにこの作品のねらいはあるような気がするのだ。

楽しかった。泣けた。ここ何作かは巨匠然とした作品で肩がこる感じはあったけれど、これ観て宮崎駿はすごいってあらためて思った。傑作。
 
崖の上のポニョ サウンドトラック

崖の上のポニョ サウンドトラック

  • アーティスト: 久石譲,久石譲,覚和歌子,近藤勝也,宮崎駿,サントラ
  • 出版社/メーカー: 徳間ジャパンコミュニケーションズ
  • 発売日: 2008/07/16
  • メディア: CD


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『ロボコン』 [Cinema]

※映画の感想・評論(もどき)の文章では基本的にストーリーに触れる部分があるため未見の方はご注意を。

2003年『ロボコン』製作委員会
監督:古厩智之
脚本:古厩智之
出演:長澤まさみ/小栗旬/伊藤淳史/塚本高史/荒川良々/平泉成/鈴木一真/須藤理彩/うじきつよし/吉田日出子
評価:★★★★☆

以前にも見ている作品ではあるが、スカパー!の「小栗旬祭り」の一環で放送されたので、また観てみた。うん、何度観てもおもしろい、良作である。
 
ロボコン

ロボコン

  • 出版社/メーカー: 東宝
  • メディア: DVD

 
当時としては売り出し中の若手俳優の競演という趣だろうが、そのひとりひとりが今現在個々にちゃんと活躍しているのがすごい。今から振り替えれば豪華出演陣と言っても過言ではないくらいだ。

この作品が初主演作品となった長澤まさみは言うに及ばず、小栗旬、伊藤淳史、塚本高史、果ては荒川良々まで、それぞれの個性がうまく出ていてみんなしっかり見せ場もあって、それだけでも観る価値はあるといえるだろう。

一方物語は高等専門学校のロボットコンテスト、いわゆるロボコンの大会参加を通して、皆が一皮むけていくという青春物語な訳だが、そこに変な甘さや感傷的なところが全くなく、むしろ冒頭はとにかくみんながだらだらしていて魅力的で感情移入しやすい登場人物が皆無なところが現実的でよく、そこのことが後半の全国大会に向けての高揚感をうまく生み出しているのではないかと思うのだ。

この作品の長澤まさみは本当に魅力的だ。手足が長く現代的なプロポーション。でもなんだか覇気がなくやる気のない等身大の高校生を上手に演じていたと思う。驚かされるのは東宝シンデレラでデビューした目玉女優に、冒頭のボケッとした変な顔をさせてしまっていることだ。あれで一気に映画の世界の中に引きずり込むのだからただ者ではない。もちろん演出の妙でもあるといえる。

また、合宿に向かうトラックの荷台で山口百恵の「夢先案内人」を歌っているのもなんだかいい。

最近残念なのは、今になって演じる役柄に、ある種の固定した長澤まさみらしい役でしかキャスティングされないことだ。もっと冒険して欲しいし、それができる役者ではないかなと期待しているのだけれど…。

最後に優勝しちゃうのはあり得ない設定かもしれないけれど、あまりその過程に無理がないので、観たあとも爽やか気持ちになれる映画だ。そしてもの作りとかチームワークっていいなって思わされる映画でもある。

これ観て理系志望者が増えるといいんだけどね。

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『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』 [Cinema]

※映画の感想・評論(もどき)の文章では基本的にストーリーに触れる部分があるため未見の方はご注意を。

2008年アメリカ
監督:スティーブン・スピルバーグ
製作総指揮:ジョージ・ルーカス/キャスリーン・ケネディ
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ハリソン・フォード/ケイト・ブランシェット/シャイア・ラブーフ/カレン・アレン/レイ・ウィンストン/ジョン・ハート/ジム・ブロードベント
評価:★★★☆☆

「インディ・ジョーンズ」シリーズの待望の最新作が公開された。いや、公開は来週なのだが、さまざまな情報に毒される前に見ておこうと思ったので、先行上映の初日初回に見に行った。それだけ期待していたということでもある。

シリーズの第1作が公開された時はまだ中学生だった。公開当時はどうやら三部作で作られるらしいという話は確かにあったものの、続くシリーズがここまでの人気シリーズになるとはこの作品からは誰も想像しなかったのではないだろうか。一般的にはやはり何か冒険活劇というものに対してやや取っつきにくさがあったのかもしれない。正月映画として公開され、今考えれば興行収入ランキングのトップを独走状態であったろうと思うのだが、実際にはオールスター映画の『キャノンボール』に負けていたのである。爆発的な人気が出たのは2作目からで、状況としては『ターミネーター』や『ダイ・ハード』と同じような感じであったのだ。
 
インディ・ジョーンズ レイダース 失われたアーク《聖櫃》

インディ・ジョーンズ レイダース 失われたアーク《聖櫃》

  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • メディア: DVD

 
自分自身も当時はまだ監督の名前で映画を見るということはしていなかったので、ただ、『スター・ウォーズ』の監督と『未知との遭遇』の監督が何かすごいものを創ったんだという程度の認識しかなかった。そして映画の人気も今述べたようなものである。すごい映画を見に行くのだ、というような過度の期待は持っていなかった。むしろそれが良かったようだ。

内容に関しては、個人的にはこのシリーズの中で、もっとも面白い作品であると思っている。初見の印象はとにかく畳み掛けるような見せ場の連続に手に汗握って気が付いたら終わっていたといった感じである。立ち見だったのだけど、そんなことを全く意識させないくらい画面に釘付けだった。

一方でただのアクション映画というだけでなく、またSFの宇宙もののように全く現実から離れてもいず、考古学という神秘的な部分を持つ分野がテーマとなっていて、これもかなり新鮮であった。ハリソン・フォードははまり役だし、ジョン・ウイリアムスの音楽もオスカーこそ取ってはいないが、彼の最高傑作とも言える出来映えで、サントラを聴くと映像が浮かんでくるほどである。

そんな風に1作目からのめり込んだシリーズが、2作目はジェットコースタームービーとして見ている時間は楽しんだけれど、考古学の教授という部分が弱まり、ただの冒険家のアクションストーリーになってしまったなあと思ったし、3作目はショーン・コネリーの登場に期待したものの、当時のオプチカル合成技術の限界だったか、色々視覚的に気になる面もあったり、ストーリーも謎解きがかなりのテンポで進んでワクワク感に欠けたり、そのくせ戦車のバトルのシーンが異常に長く感じたり、アンバランスな印象を持ったものだった。

今回の新作は、そんな3作目から19年ぶり。撮影技術も格段に進歩している。何度も脚本を書き換えられたというし、ハリソン・フォードの年齢は気になるものの、期待が自ずと高まるのも致し方なし、だ。

見ていて今回はかなり第1作の『レイダース/失われた《聖櫃》』を意識しているのが分かった。冒頭のパラマウント・ピクチャーズの山の絵からオーバーラップする始まり方は過去3作共通なものの、タイトルの書体などは1作目と同じように白い縁取りのものだった。また、冒頭の1エピソードの後、大学の外観から授業中のジョーンズ教授の場面へと展開していく流れも同様だし、なによりカレン・アレン演じるマリオン・レイブンウッドが再登場するのが嬉しい。しかも登場時のインディに向かって「インディアナ・ジョーンズ」と名前を呼ぶ言い方も同じだ。彼女はジョーンズの恩師であるレイブンウッド教授の娘で、10代の頃に恋に落ちたという設定で『レイダース』で再会。一緒に冒険をする羽目になるという流れだったし、それだけのキャラクターがその後いろいろないきさつがあるにせよ、以後のシリーズ作品に全く登場しなかったことに違和感はあった。だからマリオンが必要と脚本のデビッド・コープが提案したということだが、「さすがわかってるね!」と思った。

にもかかわらず、鑑賞中、なんだかいろいろな違和感を感じたのはなぜだろう。インディの年老いた風貌のせい? う〜ん、それはそんなに気にならなかったなあ。なんだろうね…。

一番はやっぱり核実験の場面かな。時代感を表現したかったのかもしれないけど、別に爆発させる必要はなかったよね。あの人形の置かれた作り物の街並みと「ネバダ」という地名で何が起ころうとしているかは分かるし。いくら荒唐無稽でも冷蔵庫で助かるとは思えない。あんなに吹き飛ばされて。しかもまだキノコ雲が見える時にあの位置で外に出ちゃったら相当量の被爆をしているはずだ。そういう現実感覚で見ちゃいけない映画なのかもしれないけれど、オカルト的な部分ならいくらでも荒唐無稽にしてもいいけれど、ことは原爆だよ。なんかしっくりこなかった。

それと既に亡くなった(という設定で)父親とマーカスの写真を見て懐かしむというシーンがあったにもかかわらず、その直後にマーカスの銅像の首が転がるショットは笑えるものではなかった。同じ場面でインディも笑ってなかったけど、笑ってないインディを見て笑えってこと? どうしてあんなショットを入れたのだろうかねえ…。

前半のそうした気になる点が尾を引いたせいか、後半も純粋に楽しむだけで映画を見れなくなっていった。ジャングル内でのカーチェイスも、何となく派手な割には『レイダース』の発掘地からカイロまでのカーチェイスシーン(中でもインディがトラックにムチ1本で引きずられたりする場面など)に比べると、ハラハラ感や、その危機を乗り越えた時の高揚感も薄く、物足りないと感じた。

で、まあ肝心のクリスタル・スカルの謎の部分で、オカルトに宇宙の文明はつきものだと思うし、そのアイデア自体はまあいかなと。そんなに気にはならなかった。けれど、ケイト・ブランシェット演じるところのイリーナの役どころがよく分からなかった。彼女があそこまで熱心なのはスターリンのため?自分のため? ソ連が国としてどこまで絡んでいるの? アメリカが国としてその行動を阻止したいのか、単にジョーンズが私事としてそこに巻き込まれただけなのか、その辺の曖昧さが見ている自分の立ち位置も何となく不安定にさせていたように思うのだ。

ただし、自分のことでいうと若干体調が良くなかったというのもある。こういう精神状態で見たから純粋に楽しめなかった点もあったかもしれない。けれど気になった点はあまり変わらなかったかもなあとも思う。

好きなシリーズだけど、辛口の採点。もう一度見たらもう少し変わるかな。続編もまだできそうな終わり方だったけどどうなんだろう。

#あと関係ないけれどインディがどこかの場面で「I have a bad feeling about this」と言っていたけれど、これって「スター・ウォーズ」シリーズでは定番の台詞で確かハン・ソロも言っていたと思う。特に意味のない普通の表現なのかもしれないけれど、ジョージ・ルーカスも脚本に加わっているんだし、お遊びとして意識して入れたのかな。
 
インディ・ジョーンズ アドベンチャー・コレクション (期間限定生産)

インディ・ジョーンズ アドベンチャー・コレクション (期間限定生産)

  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • メディア: DVD

 
インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国 オリジナル・サウンドトラック

インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国 オリジナル・サウンドトラック

  • アーティスト: ジョン・ウィリアムズ,サントラ
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2008/06/06
  • メディア: CD

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『魔法にかけられて』 [Cinema]

※映画の感想・評論(もどき)の文章では基本的にストーリーに触れる部分があるため未見の方はご注意を。

2007年アメリカ
監督:ケヴィン・リマ
音楽:アラン・メンケン/スティーヴン・シュワルツ
出演:エイミー・アダムス/パトリック・デンプシー/ジェームズ・マースデン/ティモシー・スポール/レイチェル・コーヴェイ/スーザン・サランドン/ジュリー・アンドリュース
評価:★★★★★

この作品の話題について初めて目にしたのはいつだったろうか。おもしろそうだと感じながらも、さて、ディズニーが本丸である自らのアイデンティティとでも言えるプリンス・プリンセスのおとぎ話を現代社会と絡めて描くとなれば、どうしたってそのおとぎ話から現れてきた登場人物は奇異な目で見られるしかないし、その純朴な振る舞いが茶化されてしまって、セルフパロディとしてもそこまでやったらもうおしまいなのではないか…と心配になったのだった。

おりしも従来の2次元アニメ(セルアニメ手法のもの)の制作部門がなくなり、3D部門にしても吸収したピクサーの手を借りてやっと存続しているようなアニメ制作部隊の現状を考えると、後戻りできないところに踏み込んでしまったのではないだろうかと心配になってしまったのだ。

しかしアメリカで公開されるやいなや評価も悪くなく、売り上げも順調と聞くと、その心配も杞憂だったかなと思うようになった。それでも予告編を見ると、まだななとなく心配な気持ちは完全には払拭できなかったけれど。

そうして心配していた作品をやっと見た訳なのだが、いやこれはかなりおもしろい作品であった。

冒頭のアニメーションシークエンスも良くできていて、これまで見慣れたディズニークラシック作品のイメージのままで、まずはそこから作品世界に自然に引き込まれていくのだ。久々登場のアラン・メンケンが手がけた音楽も耳に心地よく、とても素晴らしい。

その後ニューヨークの場面に話が進むと、しばらくは懸念されていたちょっと「痛い」感じの場面が続き、少しハラハラもするのだが、翌朝の部屋掃除のミュージカルシーンから、無邪気なプリンセスのジゼルの振る舞いにも助けられ、楽しさが増してくる。そして、そのピークはセントラルパークでの「That's How You Know」を歌うシーンだ。ここではセントラルパークがまるでディズニーランドにでもなったかのように、まさに“魔法にかけられた”状態になっていて、見ている方もなんだか楽しい気分になってくるのだ。

作品全体を通してみると、確かにおとぎ話はおとぎ話として、現実とは違うという面を明示して、そこを少なからず茶化すような場面もなくはないのだが、現時社会の中で「夢と魔法」のおとぎ話はあくまでお話の中と単純に割り切らず、リアルな現実社会にもすっと入り込んできてとけ込んでくるというディズニーマジックが展開し、ディズニーランドで遊んだ後のように、見終わって幸せな気持ちで満たされるのだ。

登場人物みんなが魔法にかけられた状態で、最後は収まるところに収まってハッピーエンディング。何度見ても楽しめそうなそんな作品だった。
 
魔法にかけられて オリジナル・サウンドトラック

魔法にかけられて オリジナル・サウンドトラック

  • アーティスト: サントラ,ジェームズ・マースデン,木村聡子,小西のりゆき,エイミー・アダムス,ジョン・マクラフリン,キャリー・アンダーウッド,畠中洋,小森創介,ミュージック クリエイション,MCキッズ
  • 出版社/メーカー: エイベックス・エンタテインメント
  • 発売日: 2008/03/05
  • メディア: CD



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さらばブロディ署長;ロイ・シャイダー死去 [Cinema]

『ジョーズ』のブロディ署長役で知られる俳優のロイ・シャイダーが亡くなった。

『ジョーズ』の警察署長役、ロイ・シャイダー死去

俳優としての評価では代表作ってアカデミー賞にノミネートされた『フレンチ・コネクション』や『オール・ザット・ジャズ』なんだろうね。けれど世代的な問題か、自分の中でロイ・シャイダーといえばやっぱり『ジョーズ』『ジョーズ2』でのアミティ警察署長のブロディ役なんだよなあ。
 

ジョーズ 30th アニバーサリースペシャル・エディション

ジョーズ 30th アニバーサリースペシャル・エディション

  • 出版社/メーカー: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
  • 発売日: 2006/11/30
  • メディア: DVD


 

JAWS/ジョーズ2

JAWS/ジョーズ2

  • 出版社/メーカー: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
  • 発売日: 2007/05/10
  • メディア: DVD


 
特に1作目よりも先に『ジョーズ2』の方を劇場で観ているからか、ラストの高圧線の入ったパイプをガンガン叩いてサメをおびき寄せるところなんかはとても印象に残っていて、それからその後になって観た1作目では、海水浴場で監視をしている時のトラックバックしながらズームアップして背景がだんだんと大きく迫ってくるという有名なショットの真ん中にいるロイ・シャイダーの顔が同じく記憶に残るものとなっているのだ。

あとはリンク先のニュース記事ではB級だなんて言われちゃっているけど、『ブルーサンダー』も好き。

久しぶりに『ジョーズ』を観ようかな。

ご冥福をお祈りします。
 

フレンチ・コネクション (ベストヒット・セレクション)

フレンチ・コネクション (ベストヒット・セレクション)

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • 発売日: 2007/10/24
  • メディア: DVD


 

オール・ザット・ジャズ (ベストヒット・セレクション)

オール・ザット・ジャズ (ベストヒット・セレクション)

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • 発売日: 2007/10/24
  • メディア: DVD


 

ブルーサンダー アルティメット・コレクション

ブルーサンダー アルティメット・コレクション

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • 発売日: 2006/07/26
  • メディア: DVD

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ポール・ニューマン引退 [Cinema]

何の気無しにニュースを見ていたら、衝撃の見出しが!

ニューマンさん:引退を表明 米の代表的映画俳優 82歳

そっか、もう82歳なんだ。う〜ん、でも90歳を超えてなお俳優活動をしている人だっているんだしなあ、もったいないなあ。大好きな俳優だからやめるなんて言って欲しくなかったなあ。

出演作品で結構好きなの多いんだよね。「ハスラー」「引き裂かれたカーテン」「暴力脱獄」「明日に向かって撃て!」「スティング」「タワーリング・インフェルノ」「スクープ 悪意の不在」「評決」「ハスラー2」「未来は今」などなど。
 

明日に向って撃て! (特別編)

明日に向って撃て! (特別編)

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • 発売日: 2007/01/26
  • メディア: DVD


 

スティング スペシャル・エディション

スティング スペシャル・エディション

  • 出版社/メーカー: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
  • 発売日: 2005/12/23
  • メディア: DVD


 

タワーリング・インフェルノ

タワーリング・インフェルノ

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • 発売日: 2006/10/06
  • メディア: DVD


 
特に「明日に向かって撃て!」「スティング」「タワーリング・インフェルノ」の3作は最も脂ののっている時期の代表作だと思うし、作品もすこぶる面白い。そして「スクープ 悪意の不在」以降、そろそろアカデミー主演男優賞かな、と言われていたのになかなか受賞に恵まれず、「評決」ではものすごくいい演技でノミネートされたのに、この年は「ガンジー」旋風で受賞が叶わず、ようやく「ハスラー2」での受賞となったのだった。
 

評決

評決

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • 発売日: 2007/05/18
  • メディア: DVD


 

ハスラー 2

ハスラー 2

  • 出版社/メーカー: ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
  • 発売日: 2006/01/25
  • メディア: DVD


 
そういえば、かのヒッチコックは「引き裂かれたカーテン」で起用したポール・ニューマンのアクターズ・スタジオ風演技があんまりお気に召さなかったみたいだけど。
 

引き裂かれたカーテン

引き裂かれたカーテン

  • 出版社/メーカー: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
  • 発売日: 2007/06/14
  • メディア: DVD


 
最近ではディズニー/ピクサーの「カーズ」で老スポーツカーの声を演じていたのは、俳優の傍ら本格的なレーサーでもあり、まさにピッタリのキャスティングに思わずニヤリとしたものだった。
 

カーズ

カーズ

  • 出版社/メーカー: ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
  • 発売日: 2006/11/08
  • メディア: DVD


 
本人が理想とする演技ができないから引退…というのは自分に厳しいからなんだろうけれど、寂しいな。


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『ロッキー・ザ・ファイナル』 [Cinema]

※映画の感想・評論(もどき)の文章では基本的にストーリーに触れる部分があるため未見の方はご注意を。

2006年アメリカ
監督・脚本:シルベスター・スタローン
音楽:ビル・コンティ
出演:シルベスター・スタローン/バート・ヤング/アントニオ・ターヴァー/ジェラルディン・ヒューズ/マイロ・ヴィンティミリア/トニー・バートン
評価:★★★★★

「ロッキー」を映画館で観るのは実はこれがはじめて。でももし1〜3作目までが公開された頃が子供でなかったら観に行っていたかもしれない。というのも、テレビで放映された1〜3作目はとても好きな作品だったし、今でも1作目などは強く胸を締め付けられる作品なのだ。

不器用なロッキーがエイドリアンの勤めるペットショップへ行って、興味を引くような会話をしたり、初めてのデートでのぎこちなさだったり、エイドリアンの兄で友人のポーリーとの気持ちのズレからくる言い争いだったり…観ていてかなりもどかしい場面が続くのだけれど、その現実感覚が生々しく、そこにいる全ての人の言葉に出さない気持ちがジワジワと画面の中から圧迫してきて、そして息苦しくなるのだ。

そしてその息苦しさがあるからこそ、戦いに向けて練習を始めてから試合が終了するまでのテンポの良い展開が、息をもつかせぬものとなるし、試合が終わったあとは本当に結果などどうでも良く、とにかく頑張って一歩前に進んだことの実感を喜び、感動へと昇華される…そんな感じなのだ。

それは2作目までは確実に続き、3作目は多少の変節は感じられはしたものの、1作目から続くひとつの流れの終結という意味ではまとまった作品だったと思う。

そんな風に、3作目までは、テレビ放送でもかなり気に入った作品として観ていたのだけれども、その後、洋画の普通のドラマ(SFなどではない)を映画館に観に行くような年齢になってから公開された4、5作目は、正直もうどうでもいい作品であった。4作目はかなり政治的になってしまっていたし、5作目は既に興味を失っていた。

それからかなりの年月が経ち、5作目で完結とうたっていたシリーズの完結編として製作されたのが今回の『ロッキー・ザ・ファイナル』だ。

かなり1作目を意識した作りで、1作目が大好きなファンはたまらないだろうと思う。特にポーリーとふたりでエイドリアンとの思い出の場所を巡る冒頭の場面はあまりに切なく胸を打つ。しかし単なるノスタルジーに終わらせはしない。

ここに至るまでのシルベスター・スタローン自信のあゆみが色濃く反映され、まさにロッキー=スタローンという趣で物語は展開する。名声を得て尊敬もされたロッキーが年老いて失っていったもの。そのポッカリ空いた胸の内にまだ燃え切らずに残っている何かを燃焼させるため、新たな挑戦をはじめる。その胸の内をポーリーに嗚咽するように語る場面は、普段穏やかなロッキーだからこそ一際重い言葉に思われ、その秘めた思いの強さを物語る。

そして、息子のロバートに語る「人生程重いパンチはない」という言葉は、例えば映画を観ている人生の挫折を味わっているサラリーマンなどにも強く響くだろう。色々な出来事が襲いかかってくるけれど、打ちのめされる自分の弱さをつい他人のせいにしがちな気持ちを、それは卑怯者だというロッキーの言葉は、アクションスターからの転向を試みるもうまく運ばなかったスタローン自身の生の言葉なのだと思う。そしてここでもうこの映画は完結したと言っていい。この作品で伝えたいメッセージは、この場面でピークを迎えたと言えるだろう。

もちろん、ここから最後の試合までは、そのロッキーの戦う気持ちを試合にぶつけた1作目同様の、勝ち負けではない、思いを昇華させるための場面として欠かすことのできないものだ。60歳という年齢で鍛え上げたその身体に鞭打って戦う姿を見ていると、こちらも自然と力が入り、まるで本当に目の前で試合を見ているような錯覚に陥ってしまった。

そしてこれまでならその戦いの終わる場面でラストショットを迎えるのだが、今回ばかりはエイドリアンの墓前に赴くロッキーで締めくくっている。戦いは本当に終わって、新たに歩み始めたのだとこの場面が物語っているのだろう。

惜しむらくは、なぜ邦題が『ロッキー・ザ・ファイナル』なのか、ということくらいか。原題は『ロッキー・バルボア』だ。日本人向けにロッキーシリーズの完結編だとわかりやすい題名にしたかったのは理解できるけれど、「ロッキー・バルボア」という人の人生そのものの物語だということを考えると、ここは原題のままとすべきだったのではないかと思うのだ。

素晴らしい完結編となったことを嬉しく思うし、これで1〜3作目までの良さがさらに引き上げられたような気がする。
 

Bill Conti - Rocky (30th Anniversary Edition) [Original Motion Picture Score] (USA)
Bill Conti - Rocky (30th Anniversary Edition) [Original Motion Picture Score]


ザ・ベスト・オブ・ロッキー~ロッキー・ザ・ファイナル オリジナル・サウンドトラック

ザ・ベスト・オブ・ロッキー~ロッキー・ザ・ファイナル オリジナル・サウンドトラック

  • アーティスト: サントラ, ディエッタ・リトル, ネルソン・ピグフォード, サバイバー, ビル・コンティ, ジェームス・ブラウン
  • 出版社/メーカー: 東芝EMI
  • 発売日: 2007/04/04
  • メディア: CD
ロッキー DTSコレクターズBOX

ロッキー DTSコレクターズBOX

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • 発売日: 2007/04/20
  • メディア: DVD


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